【コラム 10】皇室典範改正について

コラム

高市内閣は皇室典範改正を強行した。日本国憲法第一条には「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」と天皇の地位、国民主権について書かれている。今回の皇室典範改正では、国民や立法府の総意に基くものではないことは明らかであり、残念な結果となった。あらためて皇室典範や天皇制についてこの機会に整理しておきたい。まずは保守的な立場である竹田恒泰氏の著作『竹田恒泰の特別講義 天皇と皇族』(GAKKEN)を読む。著者は1975年に皇族だった竹田家に生まれ、明治天皇の玄孫にあたる人物。

本書を読むと皇位継承者と皇族の減少問題を解決するためには、皇室典範の改正が急務であり、今回の皇室典範改正のポイントのひとつである旧皇族男子の養子案を著者が以前から提唱してきたことがわかる。また祭司としての天皇の務め、戦後皇籍離脱した旧十一宮家の系譜など、わかりやすく解説しているところも本書の特徴だ。「男系男子」にこだわる保守派の歴史観は、神武天皇以来2000年以上の歴史の重みとともに揺るがない。

女性天皇、女系天皇の議論さえも封じる進め方に、国民の理解は得られないものだが、この点も著者は国民の理解の外に皇統があると主張している。その中で天皇陛下が記者会見で皇室典範改正について「国民の理解が得られるものとなることを望んでいる」と述べられたことについて、著者はどう感じたのだろうか?

2冊目に2025年1月刊行された『皇室典範』(中公新書)を読む。著者の笠原英彦氏は1956年生まれ、慶應義塾大学名誉教授で専攻は日本政治史、日本行政史。有識者会議のヒアリングにも出席されており、皇室制度の専門家である。

『皇室典範』の副題は「明治の起草の攻防から現代の皇位継承問題まで」。伊藤博文は、宮中と元老院の保守派を柳原前光を通じて巧みに取り込み、皇位継承資格は「男系男子」限定で、退位の規定もない明治皇室典範の起草を主導した。これが現行の皇室典範にもそのまま継承され、制度疲労を起こしてしまっていることが皇位継承の不安定さの原因としている。

重要なことは、皇位継承の安定化と皇族数の確保をともに遅滞なく進展させることであり、「皇位継承資格を男系女子まで拡大し、内親王に限り、皇位継承資格を認めるべきである。わが国は、男系女子に皇位継承資格を認めてきた伝統があり、それが男系男子に限定されたのは、明治二十二年制定の明治皇室典範以降の短い期間に過ぎない。また皇位継承順位は男系男子を優先すべきであろう」と有識者会議のヒアリングで著者は述べている。

皇族女子の配偶者や子を皇族にしない、と今回の皇室典範改正で明示されたが、これは配偶者や子を皇族にすると男系男子子孫との間で皇位継承をめぐり混乱を生じる、という理由で女系天皇を排除しているものだ。これについて著者は本書で「男系男子優先などあらかじめ明確に皇位継承順位を定めておけば、皇族女子の配偶者や子を皇族にしても大きな問題は生じない」としている。

女系天皇は難しいとしても、女性天皇は認めることが合理的であり、現皇室の肌感覚の考えに近いのではないか。令和の国際社会で生きる上皇や天皇、皇族は非常に合理的であり、保守派の人間がむしろ内向きで頑なな思考に囚われているようだ。ちなみに現皇室寛仁親王妃信子殿下の実兄にあたる麻生太郎元総理は、保守派の考えに近いのだろう。皇室と距離を置く政治家なら一向に構わないのだが、そのお立場であるなら、皇室に関わる政治活動は慎むべきものではなかろうか。「李下に冠を正さず」である。

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