読書三昧 【おすすめ書籍 53】池上彰『歴史で読みとく!世界情勢のきほん』(ポプラ新書) 世界情勢を読み解くには各国の歴史の理解が必須です。ピョートル大帝を手本にするプーチン大統領や毛沢東を意識する習近平総書記が何を目指しているのか?またフランスが人権を大切にすること、イギリスがヨーロッパではないと主張することも本書を読むと理解が深まります。今世紀台頭してきているBRICs・グローバルサウスに頁の多くを割いていることも本書の特徴です。 2024.01.14 読書三昧
読書三昧 【おすすめ書籍 52】逢坂冬馬『歌われなかった海賊へ』(早川書房) 本屋大賞受賞作『同志少女よ、敵を撃て』の著者による第二長編です。今回はナチ・ドイツに反抗した少年少女の物語。『検証ナチスは「良いこと」もしたのか』の著者田野大輔教授が監修を務めています。「果たして自分が当時のドイツ市民であったら、どこの立ち位置にいたのでしょうか」著者のメッセージでもあるこの問いかけは読了後も心に永く残っています。 2023.12.23 読書三昧
読書三昧 【おすすめ書籍 51】有吉佐和子『青い壺』(文春文庫) 『非色』に続いて令和の時代に有吉佐和子作品が売れています。単行本が昭和52年に刊行された本書は「青い壺」を廻る、多種多様な人間模様が描かれる連作短篇集です。定年を迎えたわが身にとっても身につまされる印象的な話もあり、作家原田ひ香さんに「こんな小説を書くのが私の夢です」と言わしめた人間描写の見事さで30万部超えと増刷を重ねています。 2023.12.23 読書三昧
読書三昧 【おすすめ書籍 50】池上彰 パトリック・ハーラン『世界を動かした名演説』(ちくま新書) 世界に影響を与えた名演説を池上彰とパトリック・ハーランが解説。パックンによると修辞学(古代ギリシャの時代から続いているコミュニケ―ション学)では、説得力のある演説には3つの要素がある、と説いています。エトス(人物自身の信頼性)、ロゴス(論理的なアピールと磨かれた言葉の力)そしてパトス(聞いている人の感情)が演説の良し悪しの決め手のようです。 2023.11.26 読書三昧
読書三昧 【おすすめ書籍 49】原真人『アベノミクスは何を殺したか』朝日新書 本署では異次元緩和の危険性に警鐘を鳴らしてきた記者が金融・財政・政治・行政・思想など13人の泰斗とアベノミクス・安倍政治を徹底検証しています。「危機は毎回違った顔をしてやってくる」「将軍は一つ前の戦争を戦う」過去の金融危機で学んだ教訓を紹介する白川方明日銀元総裁の言葉が重い。また英国貴族院による「白川公聴会」は英国議会の懐の深さを伝えています。 2023.11.08 読書三昧
読書三昧 【おすすめ書籍 48】小川哲『君が手にするはずだった黄金について』(新潮社) 『ゲームの王国』で山本周五郎賞と日本SF大賞を受賞。『君のクイズ』で本屋大賞ノミネート、『地図と拳』で直木賞受賞といま最も注目されている作家の最新作です。本書は著者自身の本当の話かのような連作短編集です。小説家は想像によって架空の物語や事柄を創作しますが、本書に登場する占い師や金融トレーダー、漫画家も小説家同様に怪しげな「嘘」とともにに生きています。 2023.11.08 読書三昧
読書三昧 【おすすめ書籍 47】小野寺拓也 田野大輔『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』(岩波ブックレット) アウトバーン建設などナチスは経済回復に貢献した?ナチスは労働者の味方だった?など「ナチスは良いこともした」と主張する人が少なくないようです。ドイツ現代史が専門の著者二人が歴史学からみてナチスに評価できる点はあるのか、を本書で検証しています。2023年7月に刊行され、早くも6刷重版と岩波ブックレットでは異例の売れ方をしています。 2023.09.16 読書三昧
読書三昧 【おすすめ書籍 46】村上靖彦『客観性の落とし穴』(ちくまプリマ―新書) 客観性や数値、生産性が支配する社会で、もう少し生きやすくなるために視点を変える思考法とは。著者が調査している医療福祉現場では、客観性ではなく生々しい経験の個別性が持つ真理が他の誰にとっても真理で、個別の経験の内側に視点をとる営みを重視しています。個別の経験を尊重することはあらゆる人を尊重することを意味し、誰も取り残されない世界を目指すことになります。 2023.09.16 読書三昧
読書三昧 【おすすめ書籍 45】宮崎哲弥『教養としての上級語彙』(新潮選書) 本を読んでいると未知の言葉や難しい言回しに出くわすことがあります。辞書を引いて言葉の意味を知り、ノートやスマホのメモにその言葉を記録しておく方も多いのでは。中学の頃から書きつけてきた語彙ノートが数十冊に及ぶという著者は、語彙力の達人です。本書は使いこなせたら表現力が豊かになる、そんな上級語彙を〈自家薬籠中のもの〉とするための実用的指南書となります。 2023.08.11 読書三昧
読書三昧 【おすすめ書籍 44】高階秀爾『カラー版 名画を見る眼 Ⅱ』(岩波新書) 本書ではモネからカンディンスキー、モンドリアンまで近代絵画14人の巨匠による名画が紹介されています。著者が指摘している通り、制作年は1886年から1943年の作品ですので、わずか60年弱という短期間における変遷に驚かされます。印象派からフォーヴィスム、キュビスムを経て抽象絵画にいたるまで西洋絵画が短期間に激しい変貌を遂げた、歴史的背景を含め高階秀爾氏が解説します。 2023.08.11 読書三昧