読書三昧

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【おすすめ書籍 89】柚月麻子『BUTTER』(新潮文庫)

英国で多くの文学賞を受賞した本書は、2025年にダガー賞(英国推理小説作家協会賞)の候補作となったことをきっかけに、日本でもブレイクしています。文庫版カバーを裏返すとイギリス版の表紙を楽しむことができます。男たちを殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子の存在感に圧倒されます。彼女への面会を取りつけた週刊誌記者の町田理佳や親友の怜子に影響を与え、その恋人たちを含めて翻弄していく社会派長編小説となっています。
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【おすすめ書籍 88】櫻田智也『失われた貌』(新潮社)

『蝉かえる』で日本推理作家協会賞、本格ミステリ大賞をW受賞した著者初の長編小説です。本格ミステリ&警察小説として一級品の出来映えの本作ですが、バー「ブールバード(広小路)」のマスターと主人公日野との掛け合いは芳醇なハードボイルドとしても大いに楽しめ、シリーズ化が待ち遠しいところです。本書は先日発売されました『このミステリがすごい!2026年版』国内編で堂々の第1位です。乾杯!
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【おすすめ書籍 87】松下幸之助『道をひらく』(PHP研究所)

東京交通会館が60周年を迎えています。その建物の1、2階で営業している三省堂書店有楽町店では交通会館のイラスト入りのカバーがかかった本書が目を引きます。
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【おすすめ書籍 86】加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(新潮文庫)『戦争まで』(朝日出版社)

戦後80年の節目の年ということもあり、ようやく日本近現代史の泰斗、加藤陽子氏の著作を読む機会を得ました。2冊とも中高生に向けての講義集です。小林秀雄賞受賞の『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』にはジャン=ジャック・ルソーの次の言葉が繰り返し紹介されています。「戦争とは相手国の憲法を書きかえるもの」。
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【おすすめ書籍 85】小川哲『地図と拳 上下』(集英社文庫)

第168回直木賞受賞作の本書は2025年夏の一冊として待望の文庫化となりました。人はなぜ「地図」を描くのでしょうか、そして世界はいつまで「拳」を振りかざし、戦争に向かうのでしょうか。本書に登場する戦争構造学研究所は今年NHKでドラマ化もされた原作『昭和16年夏の敗戦』の総力戦研究所を想起させるところもあり、昭和100年・戦後80年の節目の年ならではの繋がりを感じます。深緑野分による解説も秀逸で、繰り返し頁を捲りたくなる作品です。
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【おすすめ書籍 84】河野龍太郎・唐鎌大輔『世界経済の死角』(幻冬舎新書)

『日本経済の死角』の河野龍太郎と『弱い円の正体 仮面黒字国日本』の唐鎌大輔という人気エコノミスト2人による対談が実現しました。昔は世界情勢が危なくなるとドルとともに円も買われたという「有事の円買い」もいまはなく、円が普通の通貨になったようです。
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【おすすめ書籍 83】齋藤ジン『世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ』(文春新書)

新自由主義の経済システムで1番恩恵を受けてきたのが中国です。かつての「日本叩き」のように、アメリカ経済を脅かす存在になった中国にダメージを与えるため、覇権国家アメリカは力業でシステムを変えていくのです。まるでカジノのオーナーがルールを変えていくかのように。トランプ関税はその中の一手に過ぎないのでしょう。著者はその新しい世界秩序で敗者の国が多い中で日本は相対的にいいポジションに行くことが可能である、と説いています。
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【おすすめ書籍 82】フェリックス・フランシス『覚悟』(文春文庫)

ディック・フランシスの「競馬」シリーズが甦りました。それもあのシッド・ハレ―を主人公にしたものですから、ファンにはたまりません。「利腕」「大穴」「敵手」そして「再起」。アメリカ探偵作家クラブ最優秀長編賞受賞など高い評価を得ていた伝説のシリーズを申し分なく継承しています。著者はディック・フランシスの次男フェリックス・フランシス。訳者加賀山卓朗氏、編集者永嶋俊一郎氏と三拍子揃った新「競馬」シリーズの開幕に乾杯!
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【おすすめ書籍 81】J・D・ヴァンス『ヒルビリー・エレジー』(光文社未来ライブラリー)

2024年のアメリカ大統領選でドナルド・トランプが勝利した時、副大統領になったのが本書著者のJ・D・ヴァンスです。2016年刊行の本書は白人労働者の多くに支持されたのでしょうか、アメリカで300万部を超えるベストセラーとなりました。激戦区ラストベルト出身のヒルビリー(田舎者の)・スピリッツが、トランプ陣営の勝利にも大いに貢献し、いまでは次期大統領に最も近い存在となっているヴァンス。その半生記は、祖父母や母についての記述も多く、さながらラストベルトの『百年の孤独』として、さらに多くの国々で読まれていくことでしょう。
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【おすすめ書籍 80】河野龍太郎『日本経済の死角』(ちくま新書)

過去25年でアメリカは生産性が50%上がり、賃金は25%増。フランスも生産性が20%上がり、賃金も20%弱上がっています。しかしながら日本は生産性が30%上がっているにもかかわらず、実質賃金はまったく上がっていない・・・。本書ではこの謎を解明しています。2024年ノーベル経済学賞を受賞したダレン・アセモグル、サイモン・ジョンソンそしてジェイムズ・ロビンソンの著作の併読をおすすめします。キーワードはシステムが「収奪的」か「包摂的」かです。