読書三昧

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【おすすめ書籍 74】永田和宏『知の体力』(新潮新書)

インプットされた一次情報にどのような係数をかけて、実際の場面で応用可能な情報に置き換えるか、その情報活用能力こそ、「知の体力」ということのようです。本書の中で木村敏の『時間と自己』をバイブルとして紹介しているので、ぜひこれを機会にこちらも読んでおきたいものです。高校生あるいは大学生の必読書として、またその親たちにも一生ものの思考力を本書は啓蒙してくれます。
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【おすすめ書籍 73】松岡正剛『知の編集工学』(朝日文庫)

追悼松岡正剛さん。本書は「編集は人間の活動にひそむ最も基本的な情報技術である」というテーマで展開されています。情報の動向については三つの見方を示されています。「情報は生きている」ということ、「情報はひとりではいられない」ということ、そして「情報は途方にくれている」ということです。著者の原点である本書を入口に『情報の歴史』『情報の歴史を読む』と読み進めて、編集作業のワクワク感を追体験したいものです。
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【おすすめ書籍 72】東浩紀『訂正する力』(朝日新書)

訂正する力はヨーロッパの哲学から導き出した概念ですが、それは日本の文化的なダイナミズムを表現する言葉でもあるようです。日本はじつは「訂正できる国」だった。ひとつの正しさに向けて突っ走るのではなく、たえず自己ツッコミを向ける国であり、たえず政治を脱構築する国だった、と説いています。2024年新書大賞第2位の本書は訂正する力で閉塞感のある現状を打破するための最良のテキストです。
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【おすすめ書籍 71】『アメリカ50州がサクッとわかる本』(KAWADE夢文庫)

アメリカを知るには、まずは50の州というそれぞれが異なるパーツを理解することが肝要のようです。建国13州を含め50州には歴史的背景があり、地理的条件も違いますので、主たる産業も支持する政党などの政治風土も独自色が強いことが特徴です。州というよりひとつの国のようで、アメリカ合衆国の巨大さをあらためて知ることができます。トランプが2期目の大統領に就任しますが、大統領選を機会に読んでみました。
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【おすすめ書籍 70】『キネマ旬報の100年』(キネマ旬報社)

本書の内容は、過去の選りすぐりの記事の「アーカイブス」と関係者へのインタビューや寄稿による「キネマ旬報のメイキング」の2本立てになっています。巻頭の表紙でふりかえる100年を始め、どの誌面からも映画愛が伝わってくる構成で、1頁1頁を時間をかけて丹念に読んでいきたくなる出来映え。永久保存版として多くの映画ファンに読み継がれていく、キネ旬会心の一冊です。ぜひ。
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【おすすめ書籍 69】池井戸潤『俺たちの箱根駅伝 上・下』(文藝春秋)

箱根駅伝本選に出場できない16大学から16人が召集されて関東学生連合が編成されます。オープン参加で順位や記録は参考数字でしか残らないチームながら、一流企業での仕事に信じるものを失った男が監督として本気で勝負に挑みます。敗れざる者たちによる熾烈な競走を実況するテレビマンたちの矜持も本書の読みどころのひとつ。読みながら涙が止まらない俺たちの物語は、2024年ベスト作品です。
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【おすすめ書籍 68】『和田誠 映画の仕事』(国書刊行会)

キネマ旬報の連載「お楽しみはこれからだ」の直筆原稿や、映画の名セリフ書き起こしノートなど多摩美術大学アートアーカイブセンターや国立映画アーカイブ所蔵の資料を中心に、和田誠の「映画」に関わる仕事のすべてがこの一冊にまとまっています。「麻雀放浪記」以来和田作品に多く出演した真田広之が自ら製作・主演した「SHOGUN 将軍」で2024年米国エミー賞で18冠の快挙。和田誠の限りない映画愛が真田広之を通して国境を越えています。
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【おすすめ書籍 67】鶴間和幸『始皇帝の戦争と将軍たち』(朝日新書)

著者は始皇帝をはじめとする秦漢史研究の第一人者です。毎年夏に映画公開も進み、『キングダム』ファンがさらに増えていく中で、タイムリーな企画です。始皇帝嬴政や李信など気になる登場人物の史実について知ることができますので、本書は『キングダム』の副読本としておすすめします。王齮、桓齮、李斯、蒙恬・・・。始皇帝と中華統一を支えた近臣集団の実像に迫ります。
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【おすすめ書籍 66】G・ガルシア=マルケス『百年の孤独』(新潮文庫)

本書は安部公房が「一世紀に一人、二人というレベルの作家」と評したノーベル文学賞受賞作家ガルシア=マルケスの代表作です。著者没後10年という節目に待望の文庫化となり、発売されるや完売店続出という反響は大きく、2024年夏の刊行は永く記憶されることでしょう。新潮社が用意した池澤夏樹監修の『百年の孤独』読み解き支援キットもおすすめです。ブエンディア家百年の物語をぜひ。
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【おすすめ書籍 65】三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)

読書とは自分から遠く離れた文脈に触れることであり、人を惹きつけるものです。しかし効率が優先される現代においては、この自分から離れた文脈は「ノイズ」と認識されてしまいます。全身全霊で働くほど、このノイズを頭に入れる余裕がなく本が読めなくなる、と説いています。著者は本書で提言しています。半身(週3勤務や兼業)で働ける社会、働きながら本を読める社会をつくることを。