読書三昧

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【おすすめ書籍 80】河野龍太郎『日本経済の死角』(ちくま新書)

過去25年でアメリカは生産性が50%上がり、賃金は25%増。フランスも生産性が20%上がり、賃金も20%弱上がっています。しかしながら日本は生産性が30%上がっているにもかかわらず、実質賃金はまったく上がっていない・・・。本書ではこの謎を解明しています。2024年ノーベル経済学賞を受賞したダレン・アセモグル、サイモン・ジョンソンそしてジェイムズ・ロビンソンの著作の併読をおすすめします。キーワードはシステムが「収奪的」か「包摂的」かです。
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【おすすめ書籍 79】向井万起男『メジャーリーグに魅せられて』(さくら舎)

著者は向井万起男さん。メジャーリーグ通で、本書は朝日新聞連載「大リーグ大好き!」2007年4月~2018年4月掲載分と書下ろし原稿を再編集したものです。著者はアメリカを車で旅することが数多くあったようです。メジャーリーグのレジェンドたちの聖地の数々を訪ねています。また未訳も含めてメジャーリーグに関する書籍やちょっとした台詞が入った映画や小説をも紹介しており、MLB愛好家には嬉しい情報が満載です。
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【おすすめ書籍 78】鈴木結生『ゲーテはすべてを言った』(朝日新聞出版)

第172回芥川賞受賞作品。朝日新聞「好書好日 本と出合う」での著者インタビューによると、鈴木結生さんは小学生の時に既に「聖書」と「神曲」を読破していたようです。23歳にしてこの知的興奮に満ちた作品を創作できたのは、驚くべき読書量と敬虔な文学への愛の賜物なのでしょう。
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【おすすめ書籍 77】近藤滋『エッシャー完全解読』(みすず書房)

野矢茂樹氏による朝日新聞での書評で「いやあ、推理小説を読んでもこんなに興奮したことはない」と書かれてはもう読まずにはいられません。エッシャーの作品は一見自然に見えるのですが、良く見るとありえない「だまし絵」になっています。ありえない形がなぜ自然に見えるかを著者は緻密に謎解きを進めていきます。そして解き明かした時の大きな驚きや興奮が作品ごとにあるのです。
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【おすすめ書籍 76】『オランダ人のシンプルですごい子育て』日経ビジネス人文庫

「神は世界を創ったが、オランダ人はオランダを創った」という言葉を最初に知ったのは、司馬遼太郎の『街道をゆく オランダ紀行』でした。本書にもこの言葉があり、成人してオランダで生活していたフランス人哲学者デカルトによるものだと書かれています。オランダ人は国土を創った上に、社会的信念をも確立するために戦ってきたという見方です。子どもにプレッシャーを与えない子育てをベースに、自転車専用道路の建設や着衣水泳を課す水難事故対策など社会の中心には子どもがいることが前提であるのがオランダ式のようです。
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【おすすめ書籍 75】エマニュエル・トッド『西洋の敗北』(文藝春秋)

歴史人口学者が注目する2つのデータがあります。①「乳幼児死亡率」では、アメリカはロシアより高くなっており、②「エンジニアになる若者の割合」がロシアに比べて非常に低くなっていることです。アメリカ社会の状態は良くなく、兵器を作るポテンシャルも低下しているようです。その理由として著者は西洋が飛躍的発展を遂げた基盤としての「プロテスタンティズム」が現代のアメリカにおいてゼロ状態となり、虚無的で退廃的になっていると説いています。
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【おすすめ書籍 73】山田真美『ノープロブレムじゃないインド体験記』(笠間書院)

世界の中で存在感を高め、アメリカ・中国に次ぐ大国になることが確実視されている国、そのインドの日常を本書で知ることができます。殺生を嫌うインド人の動物愛護のおかげなのでしょうか、インドには野良犬が多いようで狂犬病で毎年2万人以上亡くなっていたり、その3倍位の人がヘビに噛まれて亡くなっているようです。アパートの壁が突然ぶち抜かれたり、子の人生に介入しまくる親の存在だったり・・・。インド人の「ノープロブレム」には気を付けたほうが良さそうです。
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【おすすめ書籍 72】『くらしのやきもの図鑑ミニ』(マイナビ文庫)

全国の窯場、やきものの特徴など写真付きで基本情報が載っていることもあり、初心者から愛好家まで産地めぐりに必携の一冊となっています。金重陶陽、北大路魯山人ほか十人の昭和の名匠による作品はぜひ知っておきたいものです。マイナビ文庫の図鑑ミニシリーズは下学上達(かがくじょうたつ)に絶好な入門書であることをあらためて気づかされます。
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【おすすめ書籍 71】北大路魯山人『春夏秋冬 料理王国』(中公文庫)

唯一無二の芸術家北大路魯山人は料理人、美食家にとどまらず料理を載せる器にも拘り、陶芸家としても大成(織部焼の人間国宝に指定を打診されましたが、辞退)しました。わが国の美食家による料理談義やフランス料理に対する痛烈な批判精神は、我が道をゆく孤高の名匠だからこそ発することができたのでしょう。本書は至高の食エッセイと呼ぶに相応しい一冊です。
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【おすすめ書籍 74】永田和宏『知の体力』(新潮新書)

インプットされた一次情報にどのような係数をかけて、実際の場面で応用可能な情報に置き換えるか、その情報活用能力こそ、「知の体力」ということのようです。本書の中で木村敏の『時間と自己』をバイブルとして紹介しているので、ぜひこれを機会にこちらも読んでおきたいものです。高校生あるいは大学生の必読書として、またその親たちにも一生ものの思考力を本書は啓蒙してくれます。