【コラム 5】〈VIVANT〉の言葉から

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TBS日曜劇場〈VIVANT〉は、最終回の世帯視聴率が19.4%と好調に終了した。このドラマほど「考察」がネットニュースやSNSに次々と流れたものは他に類を見ない。今年の流行語大賞は「VIVANT」「考察」で決まりのようだ。

福澤克雄監督自身が原作も書いている〈VIVANT〉は、堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、役所広司、二宮和也、松坂桃李と主役級を数多く揃えた豪華キャストに加え、モンゴルでの撮影などスケールが桁外れであった。それは新型コロナウィルスやウクライナ戦争、円安による物価高などの閉塞感を一挙に打破してみせるかのような、とびきり贅沢なドラマを創ろうとするスタッフ、キャストの熱量の結実でもあった。

ドラマのタイトルの〈VIVANT〉はフランス語で、①生きている、命のある ②生き生きとした、活発な、活気のある ③生きているような、生き写しの ④生きた人間による、生身の ⑤生き延びている、存続しているという意味である。(『プログレッシブ仏和辞典』)このタイトルは最終回を迎えてもなお、ますます意味するものが増してきているように思えた。

〈VIVANT〉の中で乃木(堺雅人)が、野崎(阿部寛)に飛行機の中で伝えた次の言葉は話題になった。「あなたは鶏群の一鶴 眼光紙背に徹す」。「鶏群一鶴」とは、鶏の群れの中に、一羽の鶴がまじっていること。多くの凡人の中に、きわだってすぐれた一人の人物がいることのたとえ。「眼光紙背」とは、眼の光が紙を裏側までつらぬく。紙面から筆者の真意を読むように、読者の理解力がきわめて高いことをいう。(竹田晃『四字熟語成句辞典』講談社より)乃木が野崎に寄せる信頼の言葉であり、その後の彼らの連携プレイへと繋がる重要なシーンにおける含蓄の深い言葉で、名場面のひとつとなった。

このドラマの最終回で、もう一度漢文を用いた言葉を乃木が発する場面があった。ノゴーン・ベキ(役所広司)のお墓について、ノコル(二宮和也)がバルカに建てたいと伝えたことに対し「皇天親無く惟徳を是輔く」と返答する。出典は「五経」の一つである『書経』。意味は「天はとくに人を選んで親しむことをしない。道徳の人でさえあれば、だれであれ区別なくこれを助けるものである」(諸橋轍次『中国古典名言辞典』講談社より)この言葉のあとに「花を手向けるのはまだ先にするよ」と続く。徳を積んできたノゴーン・ベキは果たして本当に死んだのか?生きているのか?いくつかの謎を残しながら、2年後?に予定されている次回作へと続く。

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