【コラム 1】週休3日で「潤沢さ」を享受

雑記ブログ

斎藤幸平氏の『人新世の「資本論」』は刺激的な一冊である。晩年のマルクスの思考・思想を研究し、その全体像に迫る著者ならではの切り口で現代の気候変動と資本主義の関連について言及し、新たな社会システムの転換を提言している。

気候変動の課題を解決し、世界で豊かさを享受する社会にするには、マルクスの『資本論』を解説しながら、1%の富裕層による資本主義社会から、脱成長コミュニズムへの転換が必要だと99%の市民に訴えている。

脱成長のコミュニズムの柱は①使用価値経済への転換、②労働時間の短縮、③画一的な分業の廃止、④生産過程の民主化、⑤エッセンシャルワークの重視、としている。今回はこの中で②労働時間の短縮について考えてみる。

現代の労働生産性はかなり高いということを前提として、労働時間の削減が生活の質の向上を求めることに成功し、脱成長・気候変動問題解決に繋げていく。週休2日ではなく、週休3日へ移行することをコロナ禍を経験した今ほど検討すべき時期なのかもしれない。かつて週休2日制導入に際して、経営者松下幸之助は「1日休養、1日教養」と唱え、推進していた。21世紀は週休3日を実現させ、ひとりあたりの労働時間を短縮し、ワークシェアを国民全体で推し進め、この国独自の「潤沢さ」を享受することを目指してはどうだろう。週休3日制について検討するとき、給与が減額になってしまうのは困るという切実な市民の声がある。給与がそのままなら、実質賃金は上昇。また減ってしまっても、その給与減額以上の「潤沢さ」を享受できる尺度があることが望ましい。この週休3日への一歩こそ、脱成長のコミュニズムという社会システムへの転換への足掛かりになると期待したい。

先人松下幸之助に倣うならば、週休3日の場合、ひとによっては1日休養、1日教養、そして1日扶養。家族に対しての働きにあてることが可能になり、子育て・介護の時間や心にゆとりを持つことになるのではないか。あるいはひとによっては1日涵養。ゆっくりと徳性を涵養することに時間を費やすことができよう。あるひとには1日培養。手をかけ生物、植物を育てることで万事の根本を養い育てることなど、それぞれに「潤沢さ」を享受できることになるに違いない。脱成長の社会を実現し、気候変動問題の解決策の糸口をつかむには、小ぶりな日本にとっての豊かさの尺度の転換が必須である。

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