読書三昧

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【おすすめ書籍 14】原田マハ ヤマザキマリ『妄想美術館』(SB新書)

マハ&マリ。お気に入りの美術館や企画、未完の絵画の魅力などが縦横無尽に語られ、いつしか二人がダブル館長だったら、あるいは二人それぞれが一人館長だったら、こんな美術館があったなら!と妄想が膨らみます。ヤマザキマリが偏愛する、ルネサンス期の三大巨匠に隠れたアーティストの作品に注目です。絵画の見方が確実に変わります。
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【おすすめ書籍 13】池上俊一『ヨーロッパ史入門』(岩波ジュニア新書)

欧米人を理解するには、背骨である「ギリシャ神話」と「キリスト教」の知識が不可欠であることを以前学んだ。本書の池上先生によると、ヨーロッパが形成されるには、「キリスト教の霊性」「ギリシャ・ローマの理知」に加えて「ゲルマンの習俗」そして「ケルトの夢想」の4つの大きな構成要素が必要だった、と考察している。古代から絶対王政全盛期までが本書で、革命の18世紀以降現代までが次作の全2冊構成。
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【おすすめ書籍 12】國分功一郎『暇と退屈の倫理学』(新潮文庫)

人生を楽しむためにはどうしたら良いのだろうか。著者はラッセル、スピノザ、ハイデガーなど先人たちの叡智を読み解きながら、「暇」を得た時に「退屈」しなくてもいい人間のあり方について思索を巡らす。とりわけ英国の19世紀のデザイナーであるウィリアム・モリスの思想に対する著者の解説に得心がいく人は多いに違いない。大学生や還暦を迎えた中高年の方々に読んでいただきたい一冊。
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【おすすめ書籍 11】堀川恵子『暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ』(講談社)

人類初の原子爆弾は、なぜ〝ヒロシマ〟に投下されなくてはならなかったか。著者はこの疑問を突き詰めるために取材を開始した。広島の宇品港が陸軍の拠点となり、当時の船舶事情に精通していた陸軍船舶司令官田尻昌次の手記など未公開史料を掘り起こす。取材を進めていく中で、「海上輸送」を重要視したアメリカとの差が次第に浮き彫りになってくる。第48回大佛次郎賞受賞の傑出した作品。
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【おすすめ書籍 10】司馬遼太郎『峠 上・中・下』(新潮文庫)

日本中が京都か江戸かに分かれて戦争をしようというときに、河井継之助は長岡藩だけはどっちにも属せず武装独立しようと思っていた。長岡という小藩に生まれたことは継之助にとって不幸であったが、長岡という小藩にとっても継之助を生んだことは不幸であった。継之助は、長岡という藩に対し、分不相応の芝居をさせようとした。
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【おすすめ書籍 9】エマニュエル・トッド『老人支配国家日本の危機』(文春新書)

フランスの歴史人口学者の著者は、日本の存亡に直結する課題として「少子化」と「人口減少」を挙げている。積極的な少子化対策を打つこと、「日本人になりたい外国人」を移民として受け入れることこそ、安全保障政策以上に最重要課題と説いている。そのためには、完璧さを求める日本人には「不完全さ」や「無秩序」を受け入れることが鍵としている。
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【おすすめ書籍 8】原田マハ『常設展示室』(新潮文庫)

美術館において企画展が非日常だとすれば、常設展示室は日常と言えよう。日常生活で誰しもに起きそうな出来事を描きつつ、それぞれの常設展示室のアート作品がその人に彩りを添えていく。本書は短編小説集で、連作短編も一部愉しめたところもあり、ぜひ続編を期待したい。解説の上白石萌音のコメント通り、美術館巡りに忙しくなりそうだ。
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【おすすめ書籍 7】鈴木忠平『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』(文藝春秋)

落合博満は監督として何よりもそのシーズンにとって、その試合に対して最良の戦力を選択し、采配を揮ってきた。負けないチームを築きながら、落合監督はメディアや球団そして選手にとって理解されにくい存在であった。「監督から嫌われても、使わざるを得ないような選手になれよ」とは落合が選手に伝えたかったことであるが、それを実践してきた孤高の男の矜持に胸が熱くなる。
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【おすすめ書籍 4】瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』(文春文庫)

映画公開そして地上波の放送でこの作品が長く注目されることは嬉しい限りである。映画は原作を基調としながら、アレンジして作品の魅力度を高めており、映画と原作と2倍楽しめることに成功している。加えて、映画では描かれていない原作の良さにあらためて気づかされることも収穫であろう。本書で主人公の高校の担任である向井先生の言葉にぜひ触れてほしい。
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【おすすめ書籍 3】青柳碧人『むかしむかしあるところに、死体がありました』(双葉文庫)

一寸法師、花咲か爺さん、浦島太郎といったお馴染みの昔話をミステリ仕立てに改編させた著者のアイデアが見事です。年間ミステリにランクイン、本屋大賞ノミネート作品の待望の文庫化。第二弾が早くも刊行され、西洋の童話をベースにした『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う』ともども好評。しばらくは青柳碧人から目が離せない。