読書三昧

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【おすすめ書籍 43】池井戸潤『BT’63』(講談社文庫)

BTはBonnet Truckの略。ボンネットトラックとは、乗用車のようにエンジンが運転席前方のボンネットの中に収められているトラックのことです。1963年は著者の生まれた年でもありますが、当時の日本ではこのタイプのトラックやバスが走っていました。
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【おすすめ書籍 42】佐藤優 手嶋龍一『ウクライナ戦争の嘘』(中公新書ラクレ)

ウクライナの戦争は、超大国アメリカによって管理された戦争だ。とは米ロに精通した二人の著者の見立てです。ゼレンスキーの「無条件勝利」をNATO諸国がこのまま支持していたら、この戦争は10年続くこともありうる。だから戦争終結のための処方箋が必要なのだと説いています。本書の中で、高坂正堯『国際政治』(中公新書のロングセラー)が紹介されています。こちらもぜひ。
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【おすすめ書籍 41】宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)

小学校の卒業文集に書いた将来の夢は「二百歳まで生きる」。大津市唯一のデパート西武大津店が一か月後に営業終了する時に「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」。この小説の主人公成瀬あかりのスケールの大きさは桁外れです。加えて「しかし、至らないことが多くて・・・」と反省するところもあり、大いに惹きつけられます。群を抜いた面白さであり、続編が待ち遠しい作品です。
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【おすすめ書籍 40】村上春樹『街とその不確かな壁』(新潮社)

本書のあとがきを読むとこの小説の成り立ちがわかります。核となったのは、1980年に「文學界」に発表された『街と、その不確かな壁』という中編小説で、40年後のコロナ禍という異様な環境下で根本から書き直し、完成させたのが本書です。一つのものが二つのストーリーを生み出し、二つのものが最後に一つに合体していく・・・。時を重ねた熟成の幻想世界を味わってください。
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【おすすめ書籍 39】高階秀爾『カラー版 名画を見る眼 Ⅰ』(岩波新書)

1969年の初版から50年以上読み継がれてきたロングセラーが、カラー版として刷新されました。15点の名画をカラーで鑑賞できることに加えて、本文で言及した絵画、彫刻などの参考図版63点が新たに収載されています。本書では15世紀のヤン・ファン・エイク畢生の名作から19世紀のマネの革新的な作品までの、西洋美術史の中でも輝かしいひとつのサイクルを高階秀爾氏が読み解いていきます。
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【おすすめ書籍 37】西加奈子『くもをさがす』(河出書房新社)

コロナ禍のカナダで乳がんを罹患した西加奈子。「日本人には情があり、カナダ人には愛がある」とはバンクーバーに数年暮らした著者の見立てですが、医療関係者や友人そして家族との会話や関わりが愛に満ち溢れているところが本書の特長です。不安な日々の中で光明を見出そうとする著者の心情に寄り添う。そのかけがえのない光によって読者は著者とハグをしているような温かい気持ちになる一冊で
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【おすすめ書籍 35】池井戸潤『シャイロックの子供たち』(文春文庫)

「ぼくの小説の書き方を決定づけた記念碑的な一冊。」という池井戸潤の言葉がオビに掲載されています。この言葉で本書を手に取った方も多いのでは。今回は映画化のタイミングでもあり、再読も含め、いま多くの方々に読まれています。東京第一銀行長原支店で働くさまざまな行員たちを描いた群像劇の本書は、良質の短編集の切れ味と長編ミステリの周到さとを併せ持った作品です。
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【おすすめ書籍 34】池井戸潤『ハヤブサ消防団』(集英社)

主人公のミステリ作家三馬太郎は亡き父の故郷のハヤブサ地区に移住し、消防団に入ることになる。その任命式当日に放火事件が起きてしまう。本書には次のような記述があります。「作家にとって一番の仕事は文章を書くことではなく、人の本質を見極めることである。」作家の力量のバロメーターであり、習性と言っていいこの心の在りようを読むことによって、三馬太郎は連続放火事件の真相に迫っていく。
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【おすすめ書籍 33】斎藤幸平『ゼロからの「資本論」』(NHK出版新書)

資本主義は放置すれば社会の富や自然の富を掠奪して破壊してしまう、とはマルクスの晩期の思想であり、その現れが現代の格差問題と気候変動であると著者は見ています。現代にマルクスを蘇らせることはできませんが、マルクスの『資本論』をベースに現代の諸問題を解決していくことを提言しています。資本主義の行き過ぎに「待った」をかけ、脱成長の社会システムへの転換が、瀬戸際の地球に生きるヒトの分相応の営みなのだと気づかされます。
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【おすすめ書籍 32】櫻田智也『サーチライトと誘蛾灯』(創元推理文庫)

著者櫻田智也のデビュー作の本書は、昆虫好きの主人公が探偵役の連作短編集です。普段はとぼけた感じなのですが、事件の謎に対しての推理の切れは鋭い。ブラウン神父や亜愛一郎シリーズに連なる創元推理らしい作品の登場です。それぞれ切ない物語であっても、主人公の飄々とした振る舞いが読後感を爽やかなものにしています。収録作の中では『火事と標本』が特におすすめです。