読書三昧

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【おすすめ書籍 28】河合雅司『未来の年表 業界大変化』(講談社現代新書)

2017年の刊行以来、累計90万部突破の『未来の年表』シリーズの最新刊です。本書第一部では人口減少と少子高齢化が進む日本はまさに瀬戸際であり、各業界や職種にどんな未来が待ち受けているかを可視化しています。そして第二部では、人口減少に打ち克つための手順が提示されています。著者が示す「戦略的に縮む」とは・・・。
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【おすすめ書籍 27】ハン・ドンイル『教養としてのラテン語の授業』(ダイヤモンド社)

本書はラテン語の難解な文法を学習するための語学書ではありません。「Carpe diem カルペ・ディエム 今日に集中し、いまを生きろ」や「Do ut des ド・ウト・デス 与えよ、さらば与えられん」といった名言を読み解きながら、古代ローマ人からの叡智を授業さながら学ぶことができる人文書です。近年リベラルアーツを副題としている書籍の刊行が増えていますが、本書はその中で「真打ち登場」といった趣があります。
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【おすすめ書籍 26】ジェフ・フレッチャー『SHO-TIME 大谷翔平 メジャー120年の歴史を変えた男』(徳間書店)

エンゼルス番記者による、ルーキーイヤーからの密着取材が一冊の本に纏まりました。今季の大谷翔平が、アリーグMVPを受賞した昨季より進化できた理由がこの本を読むとわかります。未来を引き寄せる夢ノートに「サイ・ヤング賞」「ノーヒッター」の記述もあり、その夢がそう遠くないと思わせる凄みを感じます。「ユニコーン(勇敢な伝説の生き物)」と現地で表現されることが多いショウヘイ・オオタニと同時代に生きることの悦びをあらためて実感しています。タカ大丸 訳。
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【おすすめ書籍 25】原田ひ香『ランチ酒 おかわり日和』(祥伝社文庫)

主人公祥子の仕事は「見守り屋」。夜勤明けで寝る前のランチ&お酒の時間が格別なひとときです。シリーズ第2弾の本書では、娘を含めた見守る人への接し方やその距離の取り方がさらに熟成されて、心地よい気分にさせてくれます。シリーズ第3弾が単行本で刊行されました。このシリーズのおかげかもしれませんが、昼食時にお酒を愉しむ人が増えているような気がします。
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【おすすめ書籍 24】石井光太『ルポ 誰が国語力を殺すのか』(文藝春秋)

「国語力」とは考える、感じる、想像する、表現するといった人間が生きていくうえで基礎となる力のことです。著者は現代の子供たちを取り巻く環境の中で、その国語力が失われている問題を前半部で提起しています。そして後半部では言葉を失った子供たちに「国語力」を再生させるために活動している人々の営みや子供たちの成長に画期的な成果をあげている学校教育者たちの挑戦を取材しています。
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【おすすめ書籍 23】木下是雄『理科系の作文技術』(中公新書)

この本の序章に英国首相の座についたウィンストン・チャーチルから政府各部局長宛のメモが載っていることをご存じですか?そのメモには報告書は要点だけを簡潔にわかりやすく言い切れ、と書かれていました。世界大戦の当時から40年後の1981年に本書は刊行され、さらに40年。この指南書は、理科系に限らず文科系の学生やビジネスパーソンにも広く読まれています。累計100万部突破のロングセラーは、まさに「殿堂入り」の風格です。
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【おすすめ書籍 22】深緑野分『スタッフロール』(文藝春秋)

映画のエンド・クレジットが長尺になっている現代とは違い、戦後ハリウッド映画のスタッフロールは短く、栄誉を享受できていた映画人は限られていました。本書はその戦後の映画界で爪痕を残そうと奮闘した特殊造形師・マチルダの切なる想いが時空を超える、ウェルメイドな作品に仕上がっています。第167回直木賞候補作となった一冊。
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【おすすめ書籍 21】チャールズ・M・シュルツ『心をととのえるスヌーピー』(光文社)

スヌーピーの漫画『ピーナッツ』を読みながら、「和敬静寂」「日々是好日」などの禅語の言葉を学ぶことが出来る本書は、10万部を超えるベストセラーになっています。ストレスが少なくないコロナ禍のいま、心を整えることの大切さに気づかされます。著者・訳者谷川俊太郎に加え、監修者枡野俊明の三拍子が揃い、思索的興趣が尽きません。
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【おすすめ書籍 20】エマニュエル・トッド『第三次世界大戦はもう始まっている』(文春新書)

ウクライナは「核家族」社会で、欧米のように個人主義、自由主義を重んじるのに対して、ロシアは「共同体家族」の社会で、権威主義を重んじており、ウクライナは家族システム的に西側である、と著者は見ています。またロシアによるウクライナ侵攻に対する世界各国の反応を分類した地図が、研究テーマである「家族システム」からみた世界地図と酷似しているなど、人類学的視点が興味深い一冊です。
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【おすすめ書籍 19】川本三郎『映画のメリーゴーラウンド』(文藝春秋)

ヤンキース、ミッキー・マントルの話から『グリーンブック』・『カーネギーホール』に繋がり、チャイコフスキーの話に。一本の映画作品のちょっとしたディテールから連想ゲームのように別の映画作品につなげていく、著者ならではの映画エッセイです。映画の愉しみ方はこうありたい、と感心することしきりです。