読書三昧

読書三昧

【おすすめ書籍 56】宮島未奈『成瀬は信じた道をいく』(新潮社)

『成瀬は天下を取りにいく』で鮮烈に登場した主人公の成瀬あかりは、2024年元日恒例の新潮社の新聞広告にも出ていました。成瀬がますます大物になってきたことが実感でき、ファンとして嬉しい限りです。続編である本作は大学を受験、入学した成瀬が学校やアルバイト先、地域で新たに個性豊かな人々と知り合います。いつしか頼もしくなっている彼らの成長を永く読んでいたい!
読書三昧

【おすすめ書籍 55】常盤新平『山の上ホテル物語』(白水社)

昭和29年創業の山の上ホテルは、建物の老朽化への対応を検討するため、70周年を迎える2024年2月13日より当面の間、休館することとなりました。ホテルの外観や月刊文藝春秋等への広告コピーを思い出された方もさぞかし多いことと思います。吉田俊男という不世出のホテル屋と「この人」にならついてゆけると思った人々の物語をこの機会にぜひ味わってください。
読書三昧

【おすすめ書籍 54】高坂正堯『歴史としての二十世紀』(新潮選書)

ウクライナ戦争やイスラエルによるパレスチナガザ地区への侵攻など戦争が続いているこの時代に、『国際政治』や『文明が衰亡するとき』の著者生前の名講演が書籍化されました。「〈いい人〉の政治家が、なぜ戦争を起こすのか」「ロシアに大国をやめろと強制することはできない」氏が語る「戦争の世紀」が再来した今、あらためて高坂史観を学ぶ人が増えてほしいと思える一冊です。
読書三昧

【おすすめ書籍 53】池上彰『歴史で読みとく!世界情勢のきほん』(ポプラ新書)

世界情勢を読み解くには各国の歴史の理解が必須です。ピョートル大帝を手本にするプーチン大統領や毛沢東を意識する習近平総書記が何を目指しているのか?またフランスが人権を大切にすること、イギリスがヨーロッパではないと主張することも本書を読むと理解が深まります。今世紀台頭してきているBRICs・グローバルサウスに頁の多くを割いていることも本書の特徴です。
読書三昧

【おすすめ書籍 52】逢坂冬馬『歌われなかった海賊へ』(早川書房)

本屋大賞受賞作『同志少女よ、敵を撃て』の著者による第二長編です。今回はナチ・ドイツに反抗した少年少女の物語。『検証ナチスは「良いこと」もしたのか』の著者田野大輔教授が監修を務めています。「果たして自分が当時のドイツ市民であったら、どこの立ち位置にいたのでしょうか」著者のメッセージでもあるこの問いかけは読了後も心に永く残っています。
読書三昧

【おすすめ書籍 51】有吉佐和子『青い壺』(文春文庫)

『非色』に続いて令和の時代に有吉佐和子作品が売れています。単行本が昭和52年に刊行された本書は「青い壺」を廻る、多種多様な人間模様が描かれる連作短篇集です。定年を迎えたわが身にとっても身につまされる印象的な話もあり、作家原田ひ香さんに「こんな小説を書くのが私の夢です」と言わしめた人間描写の見事さで30万部超えと増刷を重ねています。
読書三昧

【おすすめ書籍 50】池上彰 パトリック・ハーラン『世界を動かした名演説』(ちくま新書)

世界に影響を与えた名演説を池上彰とパトリック・ハーランが解説。パックンによると修辞学(古代ギリシャの時代から続いているコミュニケ―ション学)では、説得力のある演説には3つの要素がある、と説いています。エトス(人物自身の信頼性)、ロゴス(論理的なアピールと磨かれた言葉の力)そしてパトス(聞いている人の感情)が演説の良し悪しの決め手のようです。
読書三昧

【おすすめ書籍 49】原真人『アベノミクスは何を殺したか』朝日新書

本署では異次元緩和の危険性に警鐘を鳴らしてきた記者が金融・財政・政治・行政・思想など13人の泰斗とアベノミクス・安倍政治を徹底検証しています。「危機は毎回違った顔をしてやってくる」「将軍は一つ前の戦争を戦う」過去の金融危機で学んだ教訓を紹介する白川方明日銀元総裁の言葉が重い。また英国貴族院による「白川公聴会」は英国議会の懐の深さを伝えています。
読書三昧

【おすすめ書籍 48】小川哲『君が手にするはずだった黄金について』(新潮社)

『ゲームの王国』で山本周五郎賞と日本SF大賞を受賞。『君のクイズ』で本屋大賞ノミネート、『地図と拳』で直木賞受賞といま最も注目されている作家の最新作です。本書は著者自身の本当の話かのような連作短編集です。小説家は想像によって架空の物語や事柄を創作しますが、本書に登場する占い師や金融トレーダー、漫画家も小説家同様に怪しげな「嘘」とともにに生きています。
読書三昧

【おすすめ書籍 47】小野寺拓也 田野大輔『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』(岩波ブックレット)

アウトバーン建設などナチスは経済回復に貢献した?ナチスは労働者の味方だった?など「ナチスは良いこともした」と主張する人が少なくないようです。ドイツ現代史が専門の著者二人が歴史学からみてナチスに評価できる点はあるのか、を本書で検証しています。2023年7月に刊行され、早くも6刷重版と岩波ブックレットでは異例の売れ方をしています。