【おすすめ書籍 86】加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(新潮文庫)『戦争まで』(朝日出版社)

読書三昧

戦後80年の節目の年ということもあり、ようやく日本近現代史の泰斗、加藤陽子氏の著作を読む機会を得ました。2冊とも中高生に向けての講義集です。小林秀雄賞受賞の『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』にはジャン=ジャック・ルソーの次の言葉が繰り返し紹介されています。「戦争とは相手国の憲法を書きかえるもの」。

日本も第二次世界大戦で敗戦国となり、新しい日本国憲法が生まれ、そこにはリンカーンの演説からの一節「人民の人民による人民のための政治」が繋がっています。「日本切腹、中国介錯論」の胡適や「日本は戦争する資格がない」と平和思想を説いた海軍の水野廣徳の存在など本書で初めて知ることが少なくありません。

『戦争まで』には、「日本という国は、戦争や武力行使が必要となるとき、自分はやりたくない、もしくはしたくないように見せたい、という行為を反復してきた国ではなかったか」という一文があります。被動者の立場をとりたいとする陸奥宗光を継承しており、印象的です。

中高生の頃に加藤陽子氏の著作に出会うことが可能になった、いまの若い人が兎にも角にも羨ましい!

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