【おすすめ書籍 95】寺島実郎『21世紀未来圏 日本再生の構想』(岩波書店)

読書三昧

本書の副題に「全体知と時代認識」とあります。「全体知」とは専門知、総合知を超えた統合された叡智のこと。少し長くなりますが、本文を引用します。政治的意思決定における「全体知」とは何か。理想的には、「政治主導・官邸主導」の政治力学の中で、日本の意思決定の中枢たる政治指導部が国民や専門家よりも一次元高い「全体知」を有し、政策の優先順位が判断されるべきなのだが、この国は官邸とそれを取り巻く周辺の知的レベルと、利害関係に基づく意思決定に埋没しているといわざるを得ない。政策判断に不可欠な「全体知」として、歴史時間における進路認識と世界を見渡す意思に加え、人間の内なる価値を真摯に探究する精神性を挙げておきたい。コロナ禍における日本の指導者の沈黙の意味は、練磨した「全体知」がないことに由来すると思われる。(137頁)

上記コロナ禍での対応のほかにも、直近では円安による物価高対策からイラン情勢の悪化とオイルショックへの対応についても日本の指導者たちの危機感の乏しさが気になります。

全体知への練磨が急がれる中で、本書では福沢諭吉の「脱亜論」、石橋湛山の「小日本主義」、そして高坂正堯「海洋国家日本の構想」という先人たちの構想をヒントにしています。著者は日本の指導者にはこの全体知の中での意思決定をして日本を再生させていく構想力がほしい、と説いています。

TBS日曜日の朝の「サンデーモーニング」でもお馴染みになった寺島氏。彼の「世界を知る力」という番組をご存じですか。東京メトロポリタンテレビで月1回のペースで放映されているほかにもYouTubeで見逃し配信を観ることができます。

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