【おすすめ書籍 41】宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)

読書三昧

小学校の卒業文集に書いた将来の夢は「二百歳まで生きる」。大津市唯一のデパート西武大津店が一か月後に営業終了する時に「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」。この小説の主人公成瀬あかりのスケールの大きさは桁外れです。加えて「しかし、至らないことが多くて・・・」と反省するところもあり、大いに惹きつけられます。群を抜いた面白さであり、続編が待ち遠しい作品です。

この小説は主人公の成瀬のセリフが注目されています。次のものはいかがでしょう。 「大津市民憲章に『あたたかい気持ちで旅の人をむかえましょう』と書かれている。わたしとしても、旅の人をもてなすことができて光栄だ」私の好きなセリフです。大津市民憲章をまるで校歌のように誦んじるところに惹かれます。いつかジュネーブ条約や国連憲章の理念に共感した成瀬が、国際舞台で立ち上がる姿を期待します。膳所から世界へ。成瀬よ、天下を取りにいけ!

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