【おすすめ書籍 31】エルンスト・H・ゴンブリッチ『美術の物語』(河出書房新社)

読書三昧

初版から70年の間、16回もの改訂が繰り返された本書は、35カ国で翻訳されて世界一売れている(累計800万部)美術史の本です。国内でもNHKの番組「あさイチ」や月刊文藝春秋で原田マハが推薦して、昨年驚異的に売れました。ゴンブリッチ先生の授業が8,500円とはお値打ち。原田マハに倣って「序章から読み込むだけ読み込んで」みましょう。

序章

序章では画家たちの習性について触れています。画家はカンヴァスの上では、何百もの色合いや形を調整することを繰り返し、遂に「これで決まり」というところにもっていくことを生業としています。その例としてラファエロの《草原の聖母》と《草原の聖母》のための4つの習作を用い、いかにラファエロが3人の人物をどう配置すれば最上のバランスが得られるか、追求していたことを説明しています。

美術を楽しむ感性とは、芸術家たちが目指した調和やバランスとはどんなものだったかを深く味わうことであり、そういう感性が鋭くなればなるほど、美術の楽しみも大きくなるということのようです。ゴンブリッチ先生は読者に作品への向かい方を指南しています。新鮮な目と心を持ち、立ち止まってじっくりと目の前の作品に対峙してください。芸術家たちが目指したものについて新しい発見の旅が始まるのですからと。

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