和田誠・平野レミ夫妻と二人の息子が1989年の夏に、フランス~スペイン~モナコ~イタリアの各地をクルマでのんびりと巡る。風景や街並みなど父の作品に加え、息子たちの絵も愉しめます。またご当地の料理やワインの記述も多く、本書で素敵な旅を味わってください。2019年に和田誠は83歳で亡くなりましたが、2021年には「和田誠展」が開催、代表作『お楽しみはこれからだ』も国書刊行会から復刊とファンには嬉しい企画が続いています。
旅は1989年7月25日から8月18日までの25日間。パリからローマまでの行程は主に車での移動です。写真家の関原彰さんがレンタカーでの運転手役として登場します。当時のパリのエッフェル塔には100ans という文字がくっきりと光っていました。エッフェル塔が作られて100年目、フランス革命から200年目でパリの街がとても賑わっている様子が窺えます。
この本は日記は平野レミさん、和田誠が絵とコラムの構成ですが、唱くん(当時中学2年生)と率くん(小学4年生)の息子二人の絵や作文も所々に出てきます。また各地の料理に平野レミのコメントが愉しめることはもちろんですが、ご当地のワインに対する唱くんのコメントが揮っているのです。ラ・マンチャのワイン「エストラ」を一口飲んで「深みが切れないで続く」と批評してみせるところ、只者ではありません。
当時中学2年生の唱くんはいまは本格的にワインを愉しんでいるのでしょうか。率くんや二人の著名な妻たちと一緒にこの旅の再現を計画していたら、と妄想してしまいます。
新型コロナウィルスで海外旅行が出来ない3年間でした。もう少し円高になれば、いよいよと思っている旅好きの方に本書をおすすめします。この家族の愉快な旅の記録を片手に、旅の一部でも再現してみてください。ひょっとしたら、いまの和田家に出会える機会があるかもしれません。
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